PR会社に勤務しながら、海外ドラマに精通した「海外ドラマコラムニスト」として、日テレ系『ZIP!』など数々のメディアで活躍する伊藤ハルカさん(以下、ハルカさん)。2015年に女の子を出産したママでもあります。出産後、ハルカさん、旦那さんともにほぼ同じタイミングで転職したこともあり、余裕を無くし気味だったというお二人。「忙しくて家事ができないときは外部サービスを頼る」、「週3・週2協定を結びそれぞれ自分だけの時間を作る」。話し合いの末こうしたルールを作り、夫婦で育児と家事を分担していったことで、ハルカさんはお子さんを旦那さんに預け10日間の海外出張に行けるまでになりました。「協定」の内容、またハルカさんが「絶対テレビに出たい!」という夢を叶えるまでのストーリーを聞いていきます。
<Profile>
伊藤ハルカ(いとう はるか)さん
6年前に、会社員+海外ドラマコラムニストという、“二束の草鞋キャリア”をスタートさせる。現在は、PR会社に勤務しながら、日本テレビ系列『ZIP!』や『SENSORS』、女性誌『an・an』、東京FM『TOKYO FM WORLD』等、“海外ドラマ”を軸に、幅広いメディアで活躍する。2年前にはママになり、ある意味“三足の草鞋”に。ママが楽しめる海外ドラマを紹介する“ママドラライター”としても活躍中である。
漠然とした海外への憧れ
留学で確信に変わった
—ご出身はどちらですか?
岡山県倉敷市です。18歳で法政大学に進学するため上京するまで、ずっと岡山で暮らしていました。
—法政大学では何の専攻を?
経済学です。在学中、試験に合格すると半年間アメリカに行けるプログラムがあったのでそれを使ってカリフォルニアの『UC Davis(University of California, Davis)』に留学し、そこでも国際経済学を勉強しました。大学時代の経験としては、これが一番良かったですね。
それまでも英語好きの母の影響で、ニュージーランドやアメリカ・ネブラスカ州にホームステイするなど漠然と海外への憧れは持っていましたが、UC Davisに留学した半年で刺激を受け、「将来は絶対アメリカに住みたい」と強く思うようになりました。
—具体的にどういうところに刺激を受けましたか?
周りの目を気にせず自分らしく生き生きと過ごしている人が多いことや、大好きなエンターテイメントが身近にあるところです。
—エンターテイメントはどういうきっかけで興味を持つようになったんですか?
中学2-3年生の頃に観た『タイタニック』です。それまで邦画にしか縁がなかったので、タイタニックを観て衝撃を受けました。「ハリウッドはなんて素晴らしいものを作るんだ!」って(笑)。それから、いつかこういう作品をつくる世界に身を置きたいと思うようになりました。
留学中、私のエンターテイメント好きはさらに加速したように思います。その頃は学生なら1本400円で映画を観られたので気軽に映画館に行けましたし、また面白いテレビ番組も多く、特に『アメリカン・アイドル』というオーディション番組の構成が好きでよく観ていました。アメリカは映像やエンターテイメントと視聴者の距離が近くて羨ましいなぁと、日に日にアメリカへの憧れが強くなっていましたね。
就職は日本でして経験を積もうと思っていたので、新卒でPR会社に入り今も別のPR会社で働いていますが、将来的には今よりさらにアメリカと密に関わる仕事がしたいと考えています。
月に4-5万円かけて
海外ドラマを観続けた
—仕事でPRを選んだのはどういう理由からですか?
映像やエンターテイメントが好きなので、そういうジャンルで働きたくてテレビ業界を志望していたのですが、残念ながらどこも受からず……。じゃあどうしよう? どうやったら近づけるだろう? と調べていくうちにPRに行き着きました。
PRの仕事は、企画を出しそれが面白かったらメディアに採用されるというものです。これは希望している、「テレビ局の人と一緒に企画を作る仕事」に近いんじゃないかと思ったんですね。そうして当時平均年齢27歳くらい、社員20人ほどのPR会社に入りました。仕事は面白くやりがいも感じていたのですが、働き詰めだったので体を壊してしまって。入社から2年で退職しました。
その頃は本当に忙しく、仕事が終わると家に引きこもっていました。引き続きアメリカに行きたいという気持ちが強かったので、ストレス解消を兼ねて観始めたのが海外ドラマ。これにドハマりして、それこそ鼻血が出るくらいひたすら観続けました(笑)。まだレンタルビデオがそこまで安くなかったので、TSUTAYAに月に4〜5万円は払っていたと思います。旧作から新作まで片っ端から観ていましたね。
—そのときの経験が、「海外ドラマコラムニスト」の仕事につながっていくんですね。
はい、とにかくかなりの本数を観たので、これだけ知識があったらコラムが書けるんじゃない? と思い、転職先のIT企業でPR業務を続けながら副業でできるライターの仕事を探し始めました。そうしたらあるとき『オンエアナビ』という、テレビで放映された話題の商品や番組のあらすじを紹介するサイトができたことを知り、そこで「ライター募集」の案内を見つけたんです。
仕事にしたいとはいえライターの実績があったわけじゃないので、老舗メディアで書くのは難しいだろうな……と思っていましたが、できたばかりのメディアだったら可能性があるかもしれない! と問い合わせると、「報酬は払えませんが書いてみませんか?」と返事をいただいて。
そこで書かせていただき経験を積んでから、好きでよくチェックしていた『海外ドラマNAVI』というサイトにも、「ライターをしているんですが、何かご協力できることはありませんか?」と問い合わせ、仕事をいただきました。それがコラムニストとしてお金をいただいた初めての仕事です。編集長はとても厳しい方でしたが、おかげでライターとしての基礎が身につくなど大変お世話になりました。結婚式にも招待したほどです。
そこからどんどん仕事の幅が広がり、『All About』や、『日経ウーマンオンライン』といったメディアでも書かせていただくようになりました。
—テレビの仕事を始めたきっかけは?
「もっと多くの人に海外ドラマの魅力を伝えたい」という思いがあり、ずっと周囲に「テレビに出たいテレビに出たい!」と言い続けていたんですね。そうしたらあるときテレビ関係者の知人の元に、「『SENSORS』(※日本テレビ系列関東ローカルの深夜番組)のご担当者さんが”海外ドラマに詳しい人”を探している」という情報が舞い込んできたらしく、私を推薦してくださったんです。こうして幸運にも、念願のテレビ出演を果たすことができました。
エンタメ業界のライターさんは出たがりじゃない方が多いのか、「海外ドラマに詳しくてテレビに出て話せる人」というニーズはあるものの、当時、実際に手を挙げる方はそこまでいなかった気がします。じゃあ私が行こう! と積極的に関わっていくうちに、テレビの仕事もどんどん増えていきました。
2017年「ゴールデン・グローブ賞授賞式」生放送番組の本番前
今は、『ZIP!』のようにコメンテーターとして自分が出演することもあれば、テレビ局から「海外ドラマを題材にした番組を作りたいから企画を考えて」と脚本作りの仕事をいただくこともあります。
2017年「ゴールデン・グローブ賞授賞式」生放送番組放送中の様子
仕事と育児両立のため
夫婦間で定めた「協定」
—お子さんを出産したのはいつですか?
2015年6月です。
お子さんと過ごす休日
—出産しお母さんになりどんなお気持ちですか?
世の中にこんなに愛おしいものが存在するのかって驚くほど可愛いです。育児は大変なこともたくさんありますけれど、プラス・マイナスで考えたら断然プラスですね。もう娘がいない生活は考えられません。以前はそこまで子ども好きな方ではなかったんですが、母親になったら他人の子どもも可愛くて仕方なくなりました(笑)。
—その気持よく分かります(笑)。ところで出産後転職されたんですよね。仕事と育児の両立は大変だと思いますが、どうやってこなしていますか?
うちは夫が育児にも家事にもかなり協力的なので、彼がいてくれるからこそ回っていると思います。
以前勤めていたIT企業には8年在籍していましたが、その間に産休・育休を経て、復帰せずに今の会社に転職しました。育休中にフリーランスの海外ドラマコラムニストになる道を模索していたのですが、友人から誘っていただいたPR会社が働くママにとても優しい職場だったので、思い切って転職しようと。ですから現在、会社員と海外ドラマコラムニストの二足の草鞋歴、6年目となります。
まだ子どもが小さいので基本は時短勤務ですが、大好きなPRの仕事に復帰したら毎日仕事が楽しくて楽しくて。海外ドラマコラムニストの仕事も継続していますが、ときにはPR業に割く時間の方が多くなることもあります。
私の残業時間が増えていくなか、夫もほぼ同じ時期に転職したので、最初は家中荒れて大変でしたね。それこそ離婚危機かと思うような苦しい時期が、3ヶ月ほど続きました。
一応家事と育児は役割分担しているんですが、夫の負担が大きくなってしまいそれがケンカの元になっていて……。結婚したときに「何か問題が起きたら、溜め込まずにきちんと話そう」と決めたので、ときには朝まで及ぶこともありましたが改善策はないか徹底的に話し合いました。そして、「自分たちでできない分は家事代行サービスを使う」で落ち着いた、という感じです。
家族で外食を楽しむことも
—それ以外にも話し合いの結果できた、「夫婦の決め事」はありますか?
ひとつは、平日の食事は作らない。今お互い仕事が忙しくて大変なので、「日清医療食品」という食品宅配サービス(※メニューは300種類以上!おいしい食事宅配サービス「食宅便」)を使っています。美味しく減塩なので、子どもも食べられるんです。1週間分のおかずを冷凍で届けてくれるので、平日は白いご飯だけ炊いておき、1食分ずつ解凍して食べています。
本当は料理が大好きなので作りたいんですが、平日は疲れ切っていて……。負担が減ればその分娘と遊べる時間が増えますし笑顔でもいられるので、今は割り切ってそうしています。
もうひとつは、「週3・週2協定」です。これは、週に3日は夫が遅く帰ってきてもいい日、週に2日は私が遅く帰ってきてもいい日を予め決めておくというものです。夫の発案で始まりました。
夫はボクサーでもあるので、ボクシングの練習、残業、飲み会という風に3日を使い、私はヨガに行ったり、残業したり、飲み会に行ったり……と2日を使っています。毎週日曜日は夜6時に夕飯を食べ、8時に娘を寝かしつけ、それから「来週はどうしますか?」という会議をし、翌週の予定を決めています。
—週に2日、時間を気にせず自分のためだけに使えるのはいいですね。
すごく自分勝手なルールですが、私は、「お母さんが幸せだったら家庭は幸せ」と考えています。幸い夫もそう思ってくれているので、いつも「どうやったらママが機嫌良くいられるか」を考えてくれているみたいです。いい例が、週3・週2協定ですね。金銭的なリスクヘッジの意味でも夫は私に仕事を続けてほしいらしく、苦手だった家事も積極的に関わってくれるようになりました。おかげで海外出張や残業があっても、安心して夫に娘の面倒を任せられます。
今は休日の料理、娘のお弁当作り、毎朝保育園に送る係と全部引き受けてくれていますよ。本当にいい夫です。大切にしなきゃですね(笑)。
「夫作の娘のお弁当です。 OLのお弁当ぐらいのボリュームがあります(笑)」(ハルカさん)
いつかはアメリカで暮らしたい!
—何か今困っていることや悩みごとはありますか?
仕事が忙しくて、なかなか平日に子どもとの時間を取れないことですね。特に3月は大きなイベントと海外出張が重なり、週3・週2協定を守れないくらい残業が続きました。夫も忙しくて早く帰れないときは、会社が契約しているベビーシッターさんに寝かしつけまでお願いしていたのですが、娘もやっぱり寂しいんでしょうね。そういう日が続くと、週末はいつも以上にぐずったり、ピッタリくっついて離れなかったりで。
なんとか定時で切り上げられるよう、近いうちに会社と相談しながら働き方を改善しなきゃと思っているところです。それにもう少し海外ドラマコラムニストの仕事に充てる時間も増やしていきたいので。
—最後に、お子さんに将来的にこんな子になってほしいという希望はありますか?
「自分は将来何になりたいから何を勉強したい」と自分で決断し、道をひらける子になってほしいですね。それから優しい子。大学に行っても行かなくてもどちらでもいいですけれど、道を外れることだけはしてほしくないです。
海外ドラマを見ている限りでは、アメリカには若いうちから自分で考え、選択している若い人が多い気がします。それは、日本とアメリカの教育の違いもあるのかなと。自分のためというのもありますけれど、アメリカの教育に興味があるので子どものことも考え、どのような形であれやっぱりいつかはアメリカで暮らしたいですね。
休日はなるべく家族ででかけるようにしているそうです
(本文おわり)
伊藤ハルカさんからいただいたギフト
1. 夢をかなえる近道は、自分の可能性を信じどんどんチャレンジしていくことと、自分はどうなりたいのかを口にし周囲を巻き込むこと
2. 夫婦で家事・育児を分担することが、多忙な日々を乗り越えるコツ。夫婦ともに忙しくて余裕がないときは、無理せず外部の力を借りる!
3. ママが笑顔だったら家族も幸せ。自分が笑顔でいられる時間をしっかり確保できれば、自然と家族も笑顔になるはず
お話を聞いて
共通の知り合いが多く、以前からFacebookでよくお姿を拝見していたハルカさん。特に印象的だったのが、ハルカさんがFacebook上で結婚を報告されたときの投稿です。「世界一のイケメンと結婚しました!」と旦那さんを紹介していて、それを見てなんて素敵な方なんだろう、いつかお会いしたいとずっと思ってきました。(初めてお会いしたのは、昨年私たちが日本に一時帰国したとき。今回お会いするのは2回目でした。)
ハルカさんは、どんどん周りを笑顔にするパワーを持った方です。実際ハルカさんが出張でNYに来られたとき、取材と食事を兼ねて我が家まで来ていただいたのですが、出張の疲れをまったく感じさせないエネルギーで我が家をパッと明るくしてくれました。その時私は1週間近く風邪を引いていて、当日も激しい頭痛と熱で10分前まで寝込んでいたのですが、話している間にみるみる元気になって、翌朝にはすっかり風邪が治っていました。(おそるべしハルカマジック…!笑)
そんな人を元気にする力をもったハルカさん。テレビに出たい! と言い続けて実際のそのチャンスをものにされたのは、周囲に「この人の夢を叶えてあげたい!」と思わせる魅力があるからだと思います。話術に長けた芸能関係者の間で、どうやったらもっと自分の存在感を発揮し、海外ドラマの魅力が視聴者に伝わるよう話せるか。私たち夫婦に熱心に相談されるようすを見て、私たちも応援したい! と思ったものです。
お子さんがもう少し大きくなり、テレビのなかのママを見つけたらどんなリアクションをするのでしょうか。最近徐々に話し始めるようになってきたという娘さん。いろいろ笑えるエピソードもあるらしいので、ぜひテレビ越しにママと対面した感想を聞いてみたいところです!
伊藤ハルカさんに教えていただいた
もっと育児を楽しめる海外ドラマ
(1)『ジェーン・ザ・バージン』(NETFLIX)
◇オススメポイント◇
「バージンなのに妊娠しちゃった!という、奇想天外な内容ではありますが、 南米系の主人公ジェーン、ジェーンの母親、祖母という3世代の女性が織りなすコメディ・サスペンスで、テンポがよく見ていて爽快です。女性のもつ底力に驚かされますね。明るい内容なので、楽しんで見られます。 」
(2)『フラーハウス』(NETFLIX)
◇オススメポイント◇
「知る人ぞ知る!『フルハウス』のリバイバル版です!『フルハウス』を見ていた層はもちろん、 見たことがない人まで楽しめる内容です! 一言でいえば大家族のドタバタコメディです。 夫を失ったDJが三人の息子を女手一人で育てるのですが、そこに、妹や親友がjoinし、みんなでDJの子育てをサポートするというものです。男の子三人がませていてキュートだし、女三人楽しんで育児をしているし、ママだって自分の人生を楽しんでいるし、とにかく前向きになれる作品です!」
(3)『ワンデイ -家族のうたー』(NETFLIX)
◇オススメポイント◇
「キューバ系アメリカ人ファミリーの日常を描いたコメディドラマ。夫と離婚し、女手一人で子供2人を育てる肝っ玉母ちゃんのペネロピ、風変わりな彼女の母、子供二人(姉と弟)の四人家族の物語。長女が性嗜好で悩んだり、自分の意見を押し付ける母にペネロピがついきつくあたってしまったり、家族だったらよくある日常の色々な問題をその都度、家族の絆で解決していくほっこりするファミリーコメディです。」