LITTLE PUMPKIN インタビュー

【Interview Vol.5】超ポジティブな私が「産後うつ」!? ママのストレスフルな状況を改善できればと、夫婦経営のスポーツカイロプラクティックで「ママサイズ」を開始ー仲野秀佳さんー

NY・マンハッタンで、スポーツカイロプラクティック『TAI Chiropractic』を夫婦で経営する、仲野秀佳さん(以下、秀佳さん)。施術は旦那さんが行い、秀佳さんは患者さんが自宅でできるエクササイズの指導や、事務作業など裏方業務を担当していますが、2015年12月、第一子となる息子さんを出産後、ママとベビーが一緒に参加できるエクササイズプログラム「ママサイズ」を立ち上げました。週に1回、自らインストラクターとなり、日本人ママを対象にダンスレッスンを行っています。ママサイズを始めたのは、「産後うつ」と思われる症状に見舞われ、ストレスフルな状況を変えたかったというご自身の経験が関係しているようです。どのように産後うつ症状を克服していったか、またNY在住のママ向けにオススメの子連れスポットなどを教えてもらいました。
<Profile>
仲野 秀佳 (なかの ひでか)さん
香港で生まれ、日本人の両親に育てられ、インターナショナルスクールで教育を受け……と非常に多文化的な幼少期を過ごしましたが、これら全ての経験は、母親になることとは関わりがありませんでした。息子は私に、本当の自分とは、弱みは、強みは、そして私は何になりたいのかといったことを教えてくれる最高の教師です。涙、笑い、そして愛情を通して母になるこの新しい旅路の全てを大切にしています。趣味は、あらゆる種類の芸術(絵画、美術館を訪れるなど)、乗馬、旅行など。

旦那さんとの出会いは6歳

—秀佳さんのバックグラウンドを教えてください。

両親は日本人ですが、生まれは香港です。ホテルマンをしていた父の仕事の関係で、生まれてからずっと香港で暮らしていましたが、中学生になるころ日本に帰国。香港ではイギリス系の学校に通い英語ベースの生活を送っていたので、日本に帰ってきてからもアメリカン・スクールに入りました。今でも日本語より英語の方が得意です。

香港に住んでいた頃の秀佳さんとお母さん

夫とは、なんと6歳のときに出会いました。もともとお互いの父親が高校の同級生で仲が良く、家族ぐるみでよく会う関係だったんですが、夫は8歳上ということもありどちらかというと年の近い彼の弟とよく遊んでいました。距離が縮まったのは、私がL.A.の大学に通い始めたころ。ちょうど彼もL.A.でスポーツカイロプラクティックを学ぶために留学していて、そこで一気に親しくなりました。

20歳のときに交際を始め、「この人となら40年後も会話は途切れないはず!」と、2年ほどして結婚。交際期間を含めるともう12年一緒にいます。

交際時、旅行先のヨセミテにて

—6歳から! それはずいぶん長い付き合いですね。L.A.の大学では何を勉強されていたんですか?

ファッションです。今でもファッションが大好きなので何か作りたいという欲求はあるんですが、趣味で作るにも、子どもが小さいので家で針を使うのは危ないし……と控えています。でも作れないとなると、余計に作りたくなりますね(笑)。

子どもが生まれる前は時間があったので、いろいろ作っていました。施術の際に患者さんに着ていただくガウンは、私のデザインなんですよ。夫の治療法は独特なので、既製品ではなかなかピッタリのものがなくて。

—そうだったんですね! TAI Chiropracticにはずいぶんお世話になっていますが、知りませんでした。話は戻りますが、20歳からの交際・結婚を経てNYでスポーツカイロプラクティック・クリニックを開設されたんですね。

はい、L.A.からNYに引っ越してきてすぐです。最初のうちは、お金はない、でもパワーは必要で……という感じで大変でしたね。結婚と引っ越し、クリニック開設が全部同時だったので、引っ越しとクリニックを優先し、4―5年経って状況が落ち着いたころに結婚式を挙げました。

L.A.からNYへ越してきたときの一枚

母乳育児にプレッシャー。

「産後うつ症状」が出た

—秀佳さんはいつも明るく元気ですが、ポジティブで居続ける秘訣は何でしょうか?

うちは家族全員超ポジティブで、そういう家庭環境で育ったので私も自然とポジティブになったとは思いますが、意識的に前向きでいられるよう心がけてもいます。

私は、人生をどういう風にしていくかは自分のチョイスだと思っています。たとえば難しいシチュエーションに遭遇したときにそれをどう捉えるかは人次第で、落ち込む人もいれば、チャンスだと考える人もいます。私は何か問題にぶつかってしまったときは、「いや、落ち込むんじゃなくて、この思いをどうやってポジティブに持っていこうか」と気持ちを切り替えるようにしています。行き詰ったときは、散歩したり行動を変えてみたり。些細なことですが、これだけでもずいぶん前向きになれます。

こんな風に基本的にはすごくポジティブな私ですが、実は出産後、「産後うつ」のような症状が出ました。病院に行かなかったのでそう診断されたわけじゃないんですが、涙が出て、ひどく落ち込む日々が続いて。性格的にうつとは無縁だと思っていたので、これには驚きましたね。

—そうだったんですか……。大変でしたね。

息子を出産したのは12月で、NYの冬は寒いので生まれたばかりの赤ちゃんを連れて外出はできません。ずっと自宅に引きこもりで友だちに会えない上に身近に家族がいないので、困ったことがあってもサポートしてくれる人がいない。こうした閉鎖的な状況にいて、どんどん追い込まれていったのだと思います。

—確かに妊娠中、母になる心の準備はしているつもりでも、いざ赤ちゃんを自宅に迎えるといろんなことが一気に変わるから気持ちがついていかないことありますよね。特に最初の子は分からないことだらけだし。

そうなんです。私にとって一番大変だったのは、母乳ですね。完全母乳をめざしていたので、出産前に授乳レッスンを受けある程度理解はしていたつもりですが、実際してみるとこんなに痛いものかと。

しかも出産後すぐ息子が風邪を引いてしまって。息子の体調は悪いし、母乳に対する不安はあるしでパニックになって……。息子にとっては母乳が唯一の栄養源ですから、何がなんでも母乳を出さなきゃ、あげなきゃというのがすごくプレッシャーになっていた気がします。

—どうやってその状況を克服していったんですか?

やっぱり外に出なきゃだなと思い、夫がオフの日に息子を預けて自宅近所を散歩したり、あとはFacebookのママグループに参加して悩み事を相談したり。皆さん面識のない方ばかりでしたが、親身になって話を聞いてくれてすごく救われました。ほかには文章に気持ちを書き出すこともしました。私は一体何をこんなに落ち込んでいるんだろうと。

そうやって自分と向き合えたのも良かったのか、3ヶ月過ぎるころには、自分のなかで前向きな変化を感じられるようになりました。6ヶ月後にはかなり良くなっていましたね。

今回は夫にサポートしてもらいながら自力で解決しましたけれど、今振り返ると、精神科を頼っても良かったかなと思います。日本では精神科というとすごく深刻な感じがしますけれど、アメリカでは皆さんすごくフランクに精神科を使います。それで気持ちがラクになるんだったらどんどん使っていくべき、というのが私の考えです。もし2人目ができて同じ状況に陥ったら、次はすぐに病院に行きたいと思います。

家族3人で息子さん1歳の誕生日をお祝い。
息子さんは砂糖を食べないのでケーキは写真用です!

ストレスフルな状況を改善したい!

「ママサイズ」を開始

—秀佳さんは、クリニックでママと2歳以下の子どもを対象にしたエクササイズプログラム「ママサイズ」を立ち上げましたよね。どういう経緯でスタートしたんでしょうか?

産後、少しずつ気持ちは前向きになっていましたけれど、もっとストレスフルな状況を改善したくて、2歳以下の子どもと一緒に参加できるプログラムをマンハッタン内で探したんですね。

体を動かすのが好きなので、エクササイズプログラムがあればと思ったんですが、あるのはヨガのようにゆっくりした動きのものばかり。親がワークアウトしている間に子どもを預かってくれるジムもありましたが、それってどういう人が面倒見てくれるのか分からないし、結構不安だなと思って。それなら子どもと一緒に体を動かせるママとベビー向けのプログラムを作ろう! と立ち上げたんです。

そうしてアップテンポな曲、クールダウンの曲、ベビー用の曲、最後に絵本の読み聞かせを組み合わせた45分のプログラムを完成させました。ありがたいことにかなり反響があり、今は週に1回程度開催しています。いらっしゃるママは駐在の方が多く、「英語の勉強がてら体を動かしたい!」というリクエストが多いので、プログラムはすべて英語で行っています。

—私も先日参加させてもらいましたが、本当に楽しかったです。たしかにいい汗かくとポジティブな気持ちになりますね。

適度に体を動かすとスッキリしますよね! よく産後ダイエットをしたいからといって、いきなり走ったり激しい運動をしたりする方もいますが、出産後は体力が落ちているので無理をすると体に負担がかかり、思わぬケガをすることがあります。それにいきなり全力で頑張ろうとしても、お子さんが小さいとなかなか長続きできないと思うので、ゆっくりと自分のペースで、軽い運動を続けることをオススメします。

ママサイズでエクササイズ指導中の秀佳さん

オンもオフも一緒の夫と妻。

関係を良好に保つ秘訣は「合意」

—秀佳さんと旦那さんは、夫婦であり職場仲間であり、共同経営者です。四六時中一緒にいるのは、いくら最愛の人とはいえ疲れてしまうと思いますが、お二人はそんな雰囲気を感じさせないくらい仲が良いですよね。どんな風に関係を保っているのでしょうか?

うちは結婚前、とことん話しあったんですね。こういうシチュエーションになったらどうする? といろいろ想定して。その前提があるので基本はうまくやれていると思いますが、とはいえ、仕事も子育ても一緒にやっているわけなので、やっぱりそれぞれ通したい意見が必ず出てきます。お互い「これは絶対大切だ」と思ったら、どうしてそれが必要なのか、大切だと考えているのかを伝え、それをベースに話し合いをします。私たちのルールは、そのときにもし納得がいかなかったら、その時点で「納得いかない」とちゃんと言うこと。

やはり「これは大切だ」と思ってしたことでも、間違っていたり失敗したりすることはあります。そういうときに、どちらかが納得しないまま始めたものだと、「私は/俺は、本当はそう思ってなかったんだよね」と言い争いになるので、それを防ぐためにも、「これで行く!」と決めた時点で、必ず2人が合意するようにしています。

「Yes」と言った以上は両者に責任が発生するので、万が一うまくいかなかったとしてもお互いを責めることはできないですし、また新たに解決策を探していけるので。

—両親が日本人で海外暮らしだと、「言葉」をどうしていくかも議論の対象になると思います。お二人はどういう方針ですか?

このトピックはかなり夫婦で話し合いました。知り合いに小児心理学の博士号を持っている人がいるので彼に相談したところ、今の研究では、バイリンガルに育てたい場合は一人が一言語を話し続けるのがいい、という結果が出ているそうなんですね。うちは彼のアドバイスに従い、私は英語で、夫は日本語で息子に話しかけるようにしています。

英語でコミュニケーションしながらセルフィー遊びをすることも

日本人ママには、

「どんどんトライして!」と伝えたい

—秀佳さんが大切にしている「子育てマイルール」はありますか?

一番は、「息子の個性」を尊重することですね。息子はすごく慎重で、新しい場所へ行ったときや何か始めるとき、ゆっくり観察してようすを伺ってから入っていきます。だから無理に「行きなさい行きなさい」と焦らせるんじゃなくて、彼のペースで行けるようじっと見守ることにしています。

—最後に、NYで暮らす日本人ママに向けて、オススメ子連れスポットや海外子育てを楽しむためのアドバイスがあればお願いします!

オススメスポットは『アメリカ自然史博物館』。映画の『ナイトミュージアム』の舞台になったところです。動物園と違って、展示されている動物が動かないので好きなだけ見ていられるし(笑)、ディスプレイの前にバーがあるんですが、ちょうどこれが2歳以下の子どもがつかめる高さになっています。

海外子育てを楽しむためのアドバイスは……とにかくなんでもトライしてください! NYにはたくさんの美術館や博物館、またセントラルパークを始めとした素晴らしい公園がありますし、子どもが楽しめるプログラムもたくさんあります。

英語が得意じゃないとそういうところに行ったりママコミュニティに入っていったりするのは怖いかもしれませんが、実はママのなかには海外から来ている人も多く、英語はセカンドランゲージという方はたくさんいます。せっかくのNY生活、英語が100%じゃないからといってトライしないのはもったいないので、ぜひお子さんと一緒にどんどん楽しいところに出向いって行って欲しいです。

NYの人たちは地下鉄でもバスでもベビーカーを運ぶのを手伝ってくれたり、子どもに話しかけてくれたりとすごく優しいですよね。何か困ったことがあっても周りが助けてくれると思うので、自信を持ってNY生活を楽しんでください!

「マンハッタンを離れて過ごす休日もオススメです!」とのこと

(本文おわり)

仲野秀佳さんからいただいた「ギフト」
※LITTLE PUMPKINではお話を伺ったお母さん、お父さん、有識者の方から頂いた知恵やアドバイス、また取り組んでいらっしゃることなどを『ギフト』と呼んでいます。

1. 「産後うつ」のような症状が出たとき、Facebookのママグループに参加して悩み相談したり散歩したり、自分の思いを紙に書き出したりと行動を変えていったことで徐々に改善されていった

2. 産後の激しい運動はケガのもと! ゆっくり自分のペースで、軽い運動を続けよう

3. オンもオフも一緒の夫婦。関係を良好に保つ秘訣は、お互い「納得した状態」で話し合いを終えること。疑問点や不安な部分があれば、それらが解消するまでとことん話し合う!

お話を聞いて
秀佳さんとは私が患者としてクリニックに通い始めたことで、仲良くなりました。同い年、数ヶ月差で出産(出産予定日ベースで言ったら1週間ほどの差!)と共通点が多く、娘の誕生日を祝いに自宅に来てくださったこともありますし、反対に私が秀佳さんの息子さんの誕生日をお祝いしにご自宅にお邪魔したこともあります。

いつも無邪気な笑顔で、こちらの気持ちまでパッと明るくしてくれる秀佳さん。今回お話を聞くまで「産後うつ」のような症状に見舞われていたことは、まったく知りませんでした。私が出産後、一番たいへんなときに秀佳さんはすぐに連絡をくれ、「何かあったら頼って」と言ってくださったのに、私は秀佳さんが抱えている悩みに気付くこともできず……。復活を遂げるまで半年ほどかかったというので、本当に大変な毎日だったと思います。

産後うつになってしまう方のお話よく耳にしますが、秀佳さんがおっしゃるとおり精神科を頼ってみるのも一つの手かもしれません。日本では精神科通いというとなんだか大変なことのような感じがしますが、一人で抱え込んでしまうより、誰かに吐き出した方がラクになることもあります(私も大学受験時、精神的に参ってしまい病院に通った経験があるのでよく分かります)。

もちろん、抵抗がある方もいると思うので、まずは秀佳さんのように、紙に自分は何を不安に感じているのか書き出してみる。軽く体を動かして汗をかく。こうしたことからスタートしてみるのもいいかもしれませんね。一人でも多くのお母さんが産後の不安から解消されることを、心から願っています。

仲野秀佳さんオススメの育児書 & 絵本

『Bizzy Bear: Fire Rescue!』

日本語バージョンはこちら▼

◇オススメポイント◇
子ども向け本の中でベストだと思います! シンプルな英語で書かれているので、簡単に読めます。他にもシリーズがあります。

『Secrets of the Baby Whisperer』

日本語バージョンはこちら▼

◇オススメポイント◇
お気に入りの一冊です。今は、幼児向けの本を読んでいます。

『The Nursing Mother’s Companion』 (※英語のみ)

◇オススメポイント◇
母乳クラスにも行きましたが、これは本当にいい本であとから読み返すのにも適しています。母乳育児に関してたくさん分からないことがありましたが、この本がほとんど私の疑問に答えてくれました。

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