LITTLE PUMPKIN インタビュー

【Interview Vol.1】在仏10年ママが「フランスは子育てしやすい国」と感じる理由とは? ―津田実穂さん前編 ―

フランス在住歴10年の津田実穂さん(以下、実穂さん)。息子さんが2歳11ヶ月、娘さんが0歳3ヶ月のときに、旦那さんの転勤に伴いフランスへ移住しました。それまで日本で暮らしてきた実穂さんがフランスに来て驚いたのは、「子育てのしやすさ」だと言います。前編は実穂さんがフランスは子育てしやすい国だと思う理由について、後編は海外で子育て中の日本人として大切にしていることを聞きました。


<Profile>
津田 実穂(つだ みほ)さん
横浜出身。パリ在住。在仏10年。13歳の息子、10歳の娘の2児の母。趣味は、体力をつけるためのジョギング&水泳。フランスのIT企業に勤めながら、反抗期を迎えつつある子どもたちの育児に奮闘中。

フランスでは子供は無条件に可愛い存在

–実穂さんは日本とフランス両方で子育てを経験していますが、フランスは子育てしやすい場所だと思いますか?

はい、とっても思います! 日本は案外子ども好きじゃない方も多いのか、子連れだと電車でも普段の生活でも謝ってばかりいた印象があるのですが、フランス人は老若男女問わず子どもが大好きなので、謝るどころかまるで、「宝物を連れてきてくれありがとう!」ぐらいの温かい対応をされます。街全体が子どもに対して優しいというか。

子どもがいるだけで道を譲ってもらえたり、列に並ばなくても済むように一番前に入れてくれたり。子連れに限らず障害者や妊婦さんに対してもそういう対応なので、弱者に優しい文化が根付いているのだと思います。

大統領に隠し子が発覚した時でさえ、不倫を非難するのではなく、「子どもが生まれたのか、それはめでたい!」とお祝いするお国柄ですから(笑)。フランス人にとっては、子どもは無条件に可愛い存在のようです。

フランスの公共機関にはエスカレーターやエレベーターがないところも多いのですが、ベビーカーを持って階段の下にいると、数秒も経たないうちに必ず誰かが声をかけてくれます。そのままベビーカーを持って階段を昇り降りしてくれるので、本当にありがたいですね。

–それは小さなお子さんを連れているお母さんにとっては心強いですね。フランスに住み始めた頃、お子さんの反応はどうでしたか?

息子はまだ2歳で小さかったのと、元から新しいところに強いタイプの子だったので、割とすぐに慣れたようです。現地の幼稚園に通い始めた頃は言葉が分からなくて泣いてしまったこともありましたが、1〜2ヶ月もすればすっかり馴染んでいました。

f2fef0_4efa1f54d993493f924be734372985ff-mv2 (1)息子さんが幼稚園に通っていた頃。世界について勉強中

–実穂さんはどうでした?

フランスは旅行で来たことがあったのでなんとかなるだろうと思っていたんですが、旅行と住むのとではまったく違い、思った以上に大変でした。特に辛かったのが言語の壁。

生活に密着したところほどフランス語しか通じなくて。家の管理人は全く英語話せないし、役所や警察といった公共サービス系は話せたとしても絶対に英語を使ってくれない。フランス語ができなかったので初めのうちは困りましたけれど、それから語学学校に通い始めて今では生活に困らないほどには話せるようになりました。

–すごいですね。実穂さんがフランスで子育てを始めて驚いたことはありますか?

一番は最初にお話したとおり、子連れに対する周囲からの視線が温かいことですね。あとは保育園。日本だと入園時の保育園バッグ、掛・敷布団カバーに始まり、着替え、オムツ、エプロン、オムツ用ビニールなどありとあらゆるものを持参しなくちゃいけないので、とにかく大荷物だし準備が大変でした。

掛・敷布団カバーは市販のものとはサイズが違うし、何より毎晩オムツ一枚一枚にまで名前を書かなきゃいけない……。一方フランスは、全部保育園で用意してくれます。オムツも用意してくれるので、持っていくものは週に一回、着替えとシーツくらい。とにかく身軽で楽でした。

日本でオムツに名前を書いていた頃

あとは、日本だと保育士さんが常に大忙しで走り回っているイメージがありましたけれど、フランスの保育士さんは基本的にずっと座ったまま。昼休みになると園の門でタバコ吸っている人もいます(笑)。日本じゃ考えられないですよね。保育士さんは日本の方が働き者だと思います。

–そういう保育士さんの対応に、親御さんからクレームがついたりしないんですか?

もちろんクレームをつける人もいますけれど、フランスはサービスの提供側も強いですからね。「文句があるんだったら来ないでください」という姿勢なので、親側もイヤだったら無理せず別の保育園に行くのだと思います。

フランスの保育園では年に一度、プロが園内で個人写真を撮ってくれる

「8割」「6割」という

時短の働き方を選択できる

–男性の育児参加についてお聞きしたいのですが、フランスでは育休を取得するパパは多いですか?

私の周りではそこまで多いという感じはしないですけれど、自由業の人は結構育児のために自ら休みを取っていますね。

でもフランスの場合は、男性が育休を取らなくても育児と仕事が両立できる時短制度が整っているので、男性も取る必要はないのかなと思います。

–時短制度とは?

フランスでは、「8割」「6割」という働き方を選べる時短制度が法律で定められていて、従業員からの希望があれば会社はそれを拒否できません。

「8割」は週5日勤務中、1日を丸々休んで週4日働く。「6割」は週3日出勤する。そして大体朝9時から夕方5時まで会社にいて、定時になったら帰宅します。子どもが小学生くらいになっても、週4日の時短勤務を選ぶ親御さんも多いですね。

–時短制度を選ばない方がその分残業するとか……?

いえ、そういったこともありません。フランスでは社員が残業すると、会社側がかなり割増して残業代を払わなければいけないので、管理職以外は定時以降まで残ることはほとんどないです。

定時で帰れれば、それだけ子どもと一緒に過ごせる時間も増えます。「8割」「6割」という働き方を選べるところや残業がないところは、フランスが子育てしやすい国だと感じる理由の一つですね。

あと、私がすごいと思っているのが、保育料が税額控除の対象になること。日本にいるときいつも、「働くために子どもを預けているんだから、保育料って必要経費じゃないの?」と思っていたんです。そしてフランスに来たら、実際に必要経費としてみなされているじゃないですか! ものすごく納得がいく制度だと思いました。

f2fef0_72d45e634b844ed3ac9ad7213f86ce17-mv2娘さんの誕生日会に17歳のマジシャンを呼んだときの一枚。
フランスでは子どもの誕生日会に催しものを企画したり、友だちを連れて外出するのが一般的

–それはすごい。他にもフランスならではの制度はありますか?

フランスはもともと少子化が問題だったのですが、政府主導でそれを乗り越えてきた歴史があります(※)。特に「3人以上」子どもがいる家庭に対する支援が手厚く、減税になったり、子ども手当ても1人あたりの金額が加算されたりします。
※ 参考:1994年に1.66と底を打った出生率が、2010年には2.00超まで回復

またユニークなところでは、子どもが3人以上いる家庭は「大家族カード」がもらえます。これを見せると家族全員分の電車代が半額になったり、美術館の入館料が割引になったりという特典が付与されます。

こうした制度がどんどん整えられていったので、フランスでは3人以上子どもを作るハードルが下がり、少子化が改善されていったのだと思います。

七五三の記念写真をエッフェル塔前で

(前編おわり)


後編(子どもたちに「フランスにいても日本人としてのアイデンティティを忘れないで」と伝えたい)はこちら

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