LITTLE PUMPKIN インタビュー

【Interview Vol.1】子どもたちに「フランスにいても日本人としてのアイデンティティを忘れないで」と伝えたい ―津田実穂さん後編―

前編に続き、フランス在住歴10年の津田実穂さん(以下、実穂さん)にお話を聞いていきます。実穂さんは現在13歳の男の子、10歳の女の子を育てるお母さん。フランスの現地企業でウェブマーケティングの仕事をしながら子育てしています。「今のところ日本に帰る予定はない」という実穂さんに、海外で暮らす日本人として子どもたちに伝えていきたいこと、また仕事と育児を両立させるためのフランス流子育て法を聞きました。

なるべく子どもの話に耳を傾ける!

–実穂さんが子育てする上で大切にしている「マイルール」はありますか?

しっかり子どもの話に耳を傾けることです。以前は自宅で働くフリーランスだったのでオンとオフの区別がつけにくく、忙しいと話を聞いてあげられないこともあったんですが、最近会社員になったので、自宅に戻り子どもが起きているうちは子ども優先! と割り切って話を聞くようにしています。

子どもってなぜか忙しい時に限って、聞いて聞いて! ってまとわりついてくるんですが(笑)、そのうち反抗期が来て話してくれなくなると思うので、話したい時に話させないと! と今はできる限り向き合っています。

あとは褒めることですね。それぞれ良いところも悪いところありますけれど、なるべく良いところを見て声に出して褒めるようにしています。それから、「好き」もしっかりと伝えるようにしています。

–他人の前でも褒めますか?

そこが難しいところなんですよね……。これはフランスに来て驚いたことの一つでもあるんですが、フランス人は他人の前でも平気で自分の子どもを褒めるんです。

たとえばこちらが、「あなたのお子さん◯◯がすごいね!」って褒めると、日本人だったら「いえいえ」って謙遜すると思うんですけれど、フランス人には謙遜の概念がないので、「うん! うちの息子すごいのよ!」って。自慢とは言わないですけれど、結構さらっとそういう風に自分の子どもを褒めるんです。

うちの子もその方が嬉しいのか、私が謙遜して褒めずにいると後から「ママは私のことそんな風に思ってたんだ……」って言われます。特に日本人の前だとなかなか自分の子どもを褒めるのは難しいので、「人前でそんなこと言えないでしょ!」と説明するんですけれど、子どもはやっぱり他人の前でも褒めてもらいたいのだと思います。

f2fef0_fb5763f5cf4c47c1aa1f8ee16bcda99a-mv2.jpg野外での誕生日会に参加したとき

自分で選択する力を身につけてほしい

–お子さんたちは何か習い事をしていますか?

息子はフランスに来てから体操を始め、今は選手として全国大会に出場し個人で3位、団体でも2位の成績を残すまでになりました。

同じ習い事をしていると送り迎えが楽なので、娘も初めのうちは一緒に体操を習わせていたんですが、踊ることに興味があったみたいで途中からバレエに切り替え、今も夢中になってやっています。

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 娘さんのバレエレッスン風景

–お二人とも活発なんですね。ところで、どうして息子さんの習い事に体操を選んだのでしょうか?

フランスでは小さい子どもができる習い事がすごく少なくて、だいたい4〜5歳スタートのものが多いんですね。3歳の子でもできる習い事で、しかも活発な子だったので何か運動を……と探していったら、たまたまその中に体操があったんです。

最初は公民館の体操教室に通っていましたが途中で先生から、「彼は素質があるから本格的なクラブで選手を目指してみては?」と提案を受け、今通っているクラブに入りました。

スポーツが大好きな子なので並行して水泳やサッカーも習い始めましたが、選手になるとなかなか他の競技との両立が難しく、今は体操一本でやっています。

–体操一本にしたのは、息子さんの希望ですか?

そうですね。習い事に関しては、自分で選んだものを尊重するようにしています。「これやってほしいな」と親の意思で習わせたものもありますけれど、結局そういうのって長続きしないんですよね。教育や学校選びも同じで、ある程度は親が選択肢を与えますが最終的な判断は子どもにさせています。

フランスの教育システムは日本と全然違うので、いろいろ調べなきゃいけません。でももう私より子どもたちの方がよく理解しているので、「子どもたちには自分で選択する力を身につけてもらい、それで行くと決めたらあとは任せる」を我が家の方針にしています。

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息子さんの体操全国大会出場時

子どもの送り迎えは友人たちとシェア

–フランスは共働き家庭が多いと聞きます。皆さん子育て、家事、仕事で忙しい毎日をどうやってこなしているのでしょうか?

外の仕組みを使うことは多いですね。たとえばうちは掃除を外注していますし、ベビーシッターを雇う家庭もたくさんあります。特に勤務時間が長い管理職に就いている方は、ベビーシッターを雇うことが多いようです。

フランスでは、10歳過ぎるまで子どもを一人で外出させないという決まりがあるので小学校に入っても送り迎えが必須なんですが、ベビーシッターを雇っている場合は親の代わりに迎えに行ってくれます。またご飯を作ってくれるシッターさんも多いので、帰宅が遅くなっても子どもに限らず、親の分の食事も用意してくれます。

ベビーシッター自体はとてもスタンダードで、比較的料金もお手頃なので、多くの家庭が利用しています。フランスでは親が遊ぶためにシッターさんに子どもを預けるのが当たり前。良い意味で生活にメリハリをつけられるので、それがまた子育てのしやすさにつながっているのかなと思います。

–実穂さんのご家庭でもベビーシッターを雇っていますか?

以前はそうしていましたが、最近では子どもたちも大きくなってきましたし、あとはベビーシッター探しに苦労するので雇っていません。

ベビーシッターは家にいる時間が長いので、なかには泥棒に変わってしまう人もいるんです。私はコミュニケーションが取りやすいのと、子どもたちの語学教育を兼ねていつも日本人の方にお願いしているんですが、最近は学生ビザの取得や更新が厳しくなっていることから、なかなかベビーシッターをしてくれる学生さんが見つからなくて……。

–お迎えが必要な娘さん(10歳)の学校が終わる時間帯は、まだ実穂さん勤務中ですよね。お子さんのお迎えはどのように?

友人たちと「シェア」することが多いですね。

–「シェア」というのは?

たとえばうちの場合だと、学校へのお迎えは子どもと同じ習い事をしているママ友にお願いして、私が帰宅するまで預かってもらいます。そして習い事の時間になったら私が迎えに行って、自分の子どもと友人の子を習い事に行かせて帰りも友人宅まで送り届ける、という感じです。

ただ私が忙しいと友人にお願いする量が増えてしまうこともあるので、そういうときは土日に子どもを預かったり、クリスマスなどのシーズンごとに贈り物をしたりすることで、少しでもフェアになるよう心がけています。

フランス人は性格がハッキリしている人が多いので、「No」と言えば本当にNoだし、「Yes」の時は完全にOKな時です。それが分かっているからお願いしやすいというのもありますが、だからと言って甘えてばかりいたら相手の負担が大きくなってしまうので、必ずバランスを取るように気をつけています。

言語の習得は

アイデンティティ形成の一環

–お子さんたちが通っているのは、現地の学校ですか? それとも日本人学校?

フランス語をメインにしつつ英語教育の割合も多いという、少しユニークなバイリンガルスクールに通っています。

–日本語の勉強はどのようにされているのでしょうか?

週に1回日本語の補習校に通わせています。自宅ではフランス語は禁止、日本語のみにしており、もし日本語が出てこなくてフランス語になってしまった場合は日本語に言い直す、というルールにしています。大変なのはやはり漢字ですね。毎年漢字検定を受けて、モチベーションを保っています。

–日本語を勉強させているのは、将来帰国したときのためですか?

うーん、まだハッキリとは分かっていなくて、子どもたちのことを考えるとフランスに残る可能性の方が高いのですが、でも日本語はしっかり出来るようになって欲しいですね。

私は言語の習得は、「アイデンティティ形成の一環」だと考えています。両親が日本人で日本生まれの子どもたちには、やはり「日本人であってほしい」という思いが強くあります。

でもフランスに住んでいる限り、どうしても「フランス的な見方」で学習することになります。たとえば、フランスでは5月8日に第二次世界大戦の「戦勝記念日」の祝日があります。日本は8月15日の「終戦記念日」ですよね。同じ第二次世界大戦でも、国が変わると「勝敗」と「終わった日付」が変わるのです。特に地理歴史は国によって大きく見方が変わるので、日本から見た場合の地理歴史もしっかり知っていてほしいですね。

あと難しいところでは、「捕鯨」に関する考え方。捕鯨は日本では文化ですが、ヨーロッパでは野蛮で残酷な行為だと考えられています。こうした問題にぶつかったとき、日本人としてどういう発言ができるかをしっかり考えられる子どもになってほしいです。日本語の読み書きができれば日本人が書いた文書を読むこともできるので、日本人視点で考えたり理解できたりするのではないかと期待を持っています。

–確かにそこは難しいところですよね。お子さんたちは今どういうスタンスなんでしょうか?

娘はまだ小学生ですからよく分かりませんが、中学生の息子は日本人として日本に誇りを持っているようです。

この先何か問題にぶつかった時、フランス人ばかりいる中で日本人だからと声をあげて日本人の視点を主張するのは、正直大変だと思います。でも歴史に限らずスポーツ、たとえばワールドカップでフランス vs 日本の試合になったような時も、日本を応援する子に育ってほしいという気持ちがあります。

–最後に海外生活10年の実穂さんから、これから海外で子育てされる方、また現在海外で子育て中という方に何かアドバイスがあればお願いします。

私もまだ子育て中なのであまり偉そうなことは言えないですけれど、アイデンティティの形成のためにも、日本語は大切にした方がいい、と思いますね。

母国語とは、母の国の言葉と書きます。海外に住んでいると、自分も子どもも、「日本のことを教えて」と言われて日本の代表みたいになることが実は結構あります。そんなときに子どもたちが、「自分が日本人である」ことを自覚して誇りに思えるか。そこは大切だと思っています。自分も子どもも経験はありませんが、「アイデンティティ・クライシス」(自己喪失)の話も聞きます。

バイリンガルは憧れの対象としてみなされることも多いですけれど、海外で暮らしていると、漢字を学ばせること一つとっても本当に大変です。でも諦めずにしっかり取り組んで、異なる言語、文化を習得できれば視野がうんと広がるので、それは必ず子どもたちの宝物になります。

とはいっても子ども次第な部分もありますので、日本語教育がうまくいかなかったとしても別にそれは失敗ではないと思いますし、最終的には本人が幸せであればなんだっていいと思います。

大変なこともたくさんありますが、一緒に海外子育て楽しんでいきましょう!

f2fef0_3046c4ee16fc4297899a36b9872e8ae1-mv2実穂さんの子育て感を変えた瞬間の一枚。
「子どもたち一人ひとりまったく違う絵を描いているのを見たとき、『みんな違って、みんないい』を実感しました。 
成績が良いとか悪いなんてどうでもいい。子どもの好きな事や個性を大切にする事の重要さを子どもたちから学びました」(実穂さん)

(後編おわり)

logo(final)

津田実穂さんから頂いた『ギフト』
※LITTLE PUMPKINではお話を伺ったお母さん、お父さん、有識者の方から頂いた知恵やアドバイス、また取り組んでいらっしゃることなどを『ギフト』と呼んでいます。

1. アイデンティティの形成は子どものうちから

2. 海外で子育てしていると、気をつけないと子どもたちの中から「日本人」という意識がどんどん薄れていきがち

3. 言語の習得をはじめ、日本の文化や歴史もしっかり勉強して、日本人であることに誇りを持ち続けてほしい!

お話を聞いて
実穂さんとは日本にいる頃に知り合いになり、一度フランスに旅行した時にもご一緒させていただきました。明るくて優しくてキュートで、とっても親切な実穂さん。私が切迫早産になり入院した時は、わざわざフランスから心のこもったギフトを贈ってくださいました。

Facebookではいつもお子さんのことを愛情&ユーモアたっぷりで書かれていて、毎回読みながら微笑んでしまいます。
(個人的には、娘さんが日本語教室から持ち帰った宿題の中で、「成人式に『祝電』が届いた」の『祝電』はなんて読むでしょう? という設問に、『おでん』と解答したというエピソードがお気に入りです♡)

フランス語が話せない中で、小さなお子さまを連れての渡仏は本当に大変だったと思います。でもその中で必死にフランス語を習得し、新しい生活に馴染んでいった実穂さん。今は現地の企業で働いているというのだから、その努力には頭が下がります。

お子さんたちはフランス語、英語、日本語のトライリンガルな上に、スポーツの才能もバッチリ! さらには成績も優秀で、過去には息子さんが算数のコンクールで全国1位になったこともあるのだとか。機会があれば改めて「文武両道子育て」についても伺ってみたいです。またよろしくお願いいたします!

実穂さんオススメの育児書 & 日本語教育に使ったマンガ

▲オススメポイント!「メールマガジンの時代から愛読していました。小学校の先生をしてた方の本です。実践的というかお役立ちな内容がたっぷりです。」
▲オススメポイント!「これはもう、タイトルが子育ての真髄を表していると思います。幼児教室の創立者の方なのでノウハウ的な箇所も多いですが、それよりもこのタイトルが一番素晴らしいと思います。」
▲オススメポイント!「テレビにもよく出ている人工知能の研究者の方の本です。とても読みやすく、かつ本業が科学者なのでエビデンスに基づいた良書です。」
▲オススメポイント!「これは、専門書に入るかもしれません。固く難しい内容の本ですが、バイリンガル育児されている方にはとてもためになる内容です。」
▲オススメポイント!「モンテッソーリ教育の本です。子どもの見方が変わります。目からウロコです。子育てのイライラが減って子どもが素敵と思える本です。」
▲オススメポイント!「子どもではなくて親の対応に焦点をあてた本。子育て以外の対人関係にも役に立ちます。 この本の成功例のように反抗期のない子どもにはなりませんでしたが、会話の仕方は本当に役に立ちました。」
▲オススメポイント!「優秀なお子さん4人を育てた方が母子で、優秀な学生さんたちに家庭での教育方法のアンケートを取ってまとめた本。 とても読みやすくわかりやすく、またデータがあるので納得できる内容です。」

【その他】

「男の子には、ポケモン、ナルト、など、現地でも人気のあるマンガを使いました。女の子には、現地でも人気のマンガがほとんどないので、少しでもとっつきやすいように、ベルばらやのだめカンタービレなどフランスが舞台のマンガを買って渡しました。日本の歴史や世界の歴史も含めて、学習まんがは子どもたちにもとてもおもしろかったようです。」

前編(在仏10年ママが「フランスは子育てしやすい国」と感じる理由とは? )はこちら

 

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