LITTLE PUMPKIN インタビュー

【Interview Vol.3】「ハーフは個性」。子どもたちの自己肯定感を高めるためにしていること―椿奈緒子さん後編―

ブラジルの貧困問題を解決したいとブラジルでインターンを経験した後、商社に新卒入社。その後、若い女性が活躍しにくい企業文化に違和感を覚えIT企業に転職した椿奈緒子さん。日本で出会ったブラジル人男性と2009年に結婚し、現在4歳の男の子、11ヶ月の女の子とともに都内で暮らしています。後編は国際結婚をして良かったこと、また子どもたちのアイデンティティ形成のために取り組んでいることなどを聞いていきます。

国際結婚の魅力は、

日本にいながら異文化を楽しめること

—国際結婚をして良かったなと思うことがあれば教えてください。

いろいろありますけれど、一番は違う国の人だからこそのリアクションを楽しめることですね。「日本人だったらそうは捉えない!」という発想だったり出来事だったり。「そう来たか!」と毎回驚かされてばかりで飽きないです。

あと夫の友だちも日本に住む外国人が多いので、そういう人たちの話もすっごく面白いですし、日本で異文化を体験できるところもいいですね。

たとえばマテ茶ってありますよね。あれ南米発祥の飲み物なんですけれど、ブラジル人は冬になると壺にマテ茶の葉っぱとお湯を入れて、鉄のストローを使ってそれを回し飲みするんです。こういう日本にはない文化を知れるのは面白いですね。日本にいながらにして海外にいる雰囲気を味わえるというか。あと、誕生日会はお友だちを呼んで盛大(?)に開くのがブラジルの文化なので、うちもそのようにしています。

息子さん4歳のブラジル風誕生日会

—それは楽しそう! 逆に大変だなと思うことはありますか?

正しい情報が違うことですね。子どもが風邪を引いたときなんて大変ですよ。私は幼いころから、風邪を引いたら温かい格好して布団被って汗かいて熱を下げる! と教えられてきたんですが、夫の国では違うんです。なんと、体の熱を下げるために冷たい水を浴びる。日本人からしたら、ええええええっていう感じですが、彼は彼でそちらの方が正しいと信じて疑わないので、こういうときなかなか解決策が見つからず困ってしまいます。

—水浴びですか。それは確かに日本人からしたらビックリです。教育面での違いもありますか?

うーん、人前でも平気で怒ることかな。これはうちに限らず、ラテン系男性と結婚したほかの女性からも聞く話なのでそういうものかもしれないんですけれど、他人の前でも結構激しく怒るんです。日本人は人前じゃそうしないですよね。でもおかげで私も子どもたちも耐久性がつきました(笑)。怒るときはかなりしっかり怒りますけれど、一方で楽しませるときも全力だからプラマイゼロかなと前向きに考えるようにしています。

ブラジルから来た友人と。「ブラジルから来るゲストと一緒にお出かけすることが多いです。
外国人が喜ぶ観光地詳しいです笑」(椿さん)

パパとはポルトガル語、

ママとは日本語で会話

—お子さんたちとはどちらの言語で会話していますか?

まだ言葉を話すのは息子だけですが、ポルトガル語も日本語も両方話せるようになってほしいので、パパと話すときはポルトガル語で、ママと話すときは日本語でとしています。先に日本語を教えていたのでポルトガル語はまだ片言ですが、少しずつ話せるようになってきました。ちなみに夫婦の会話は8:2で、ポルトガル語:日本語です。

子どもたちには、日本人として生きていくためにまずはしっかり日本語をマスターして、強みとしてポルトガル語も話せるようになってほしいと考えています。

ハーフの子どもを日本で育てるとき、うちのように日本語をベースにするか、またはもうひとつの言語をベースにしていくかは家庭によって方針が分かれるところだと思います。私たちは日本で暮らす以上、日本語が話せないと子どもたちが苦労するだろうし、悲しい思いをするかもしれないと思うのでしっかりマスターさせるつもりです。

それに、日本語以外の言語を生活のベースにするのはかなり覚悟が必要です。インターナショナルスクールの数は少ないし、学費は高いし、学童保育があるかないかなどで一気に選択肢が減ってしまいますから。

—「日本人として生きて」とおっしゃっていましたが、お子さんたちは今のところどんな風に思っているんでしょうか?

息子はダイゴって言うんですけれど、4歳になり周りから、「ダイゴくんのパパはブラジル人だよね」という感じで、「ブラジル」というキーワードが聞こえるようになってきました。それを受けてか息子も、「ダイゴはブラジル人で、ママイ(※ポルトガル語でママの意味)は日本人、パパイ(※ポルトガル語でパパの意味)はブラジル人」と言っています(笑)。本人がハッキリと分かってそう言っているのかは不明ですが、「あなたはブラジル人でもあるけれど、日本人でもあるのよ」と伝えています。

息子の通っている保育園には、結構ハーフのお子さんもいるんですね。息子にはまだハーフという概念はないかもしれないけれど、最近、自宅に貼ってある地図と国旗が重なっている壁紙ステッカーを指しながら、「あれはフランス、◯◯ちゃん。あれはフィリピン、◯◯くん」と言うようになりました。個人の特徴として「国」に興味を持ってきたのかもしれませんね。いい傾向だと思います。

これから日本はどんどんダイバーシティ社会になると思うので、子どもとは国に限らず、多様性を意識したコミュニケーションをするようにしています。「男の子でも/女の子でも◯◯したっていいじゃん」「人それぞれなんだよ」という感じで。国への興味をきっかけに、これらも理解してくれるようになったら嬉しいです。

息子さん入園式の後。自宅の前で

ブラジル人としてのアイデンティティも

持ち続けるために

—お子さんたちに、ブラジル人でもあることを意識させるために行っていることはありますか?

「ブラジル人だからサッカー上手いんでしょ?」と言われたときに期待に応えてほしいので(笑)、夫が参加しているフットサルチームの練習に息子も連れていき一緒にやらせています。あとは、こちらも夫がやりたいと言って始めたブラジリアン柔術に息子も連れて行っています。いずれ、「サッカー上手いんでしょ?」と聞かれたときに、「サッカーも得意だけど、実はブラジリアン柔術で日本一なんだ」と答えられたらカッコいいかなと(笑)。

娘の方はハーフを一つの強みにできるように、最近ハーフモデル専門の芸能事務所に入れました。といっても本格的にモデルにしたいわけじゃないので、登録料のみで案件があれば連絡がくるようなライトなところです。

娘のためというのもありますけれど、私が新しい世界を見てみたくて応募したというのもあります。まだ登録したばかりなので仕事には至っていませんが、これからどんな案件が来るか楽しみですね。

子どもの教育って、どれだけ大人がタッチポイントを増やせるかだと思うんです。うちの子たちはハーフというだけで人と違いますけれど、加えて柔術だったりモデルだったり、人と違うことにたくさん取り組んでいればそれが個性になるのかなって。私自身、母親の憧れの影響を受けてキャビンアテンダントを目指していた過去があるので、子どもが親の影響を受けることは分かっています。機会損失は親の責任と考え、チャレンジを怠らずにいろいろな世界を見せてあげたいですね。

—他に母親として、子どもたちに伝えていきたいことや望むことはありますか?

自己肯定感を持った子になってほしいです。私は高校生の頃コギャルをしていて、複数雑誌に出ていたんですけれど、親のモットーが「今を楽しむ」だったので、そういう活動にまったく反対されませんでした。それどころか、「奈緒子、雑誌に出て輝いているわ!」「今しかできないことを楽しみなさい」といつも応援してくれてそれがすごく嬉しかったんです。

またうちは4人兄弟なんですが、「好きだったら続ければいいし嫌だったらやめればいい」という感じで、好きなだけ習い事させてくれました。私はいろいろ興味があったので、小学生の頃は週に5日は何か習っていましたね。

親からはいつも「あなたはできる」と言われてきたので、それが今の、好奇心旺盛でどんなことにも前向きに取り組んでいける自分を作ってくれたと思います。私も親の教育方針をマネし、子どもたちに「あなたならできる」と伝えながらいろいろとやらせてあげたいです。

お父さんとブラジリアン柔術を楽しむスパイダーマンに扮した息子さん、可愛らしい女の子は娘さん

ハーフだからこそ見える課題を

解決できる大人になってほしい

—将来的にお子さんたちに期待することはありますか?

基本は本人がやりたいことをやってくれたらと思いますが、できたら社会に役立つ仕事をしてほしいです。純粋な日本人とは違うバックグラウンドなので、これから生きていく過程で、ハーフの子にしか分からない課題が見えてくると思うんです。それらに目を向けて、解決できるような人になってほしいなと。

私の夫は今、日本に住む外国人向けサービスを運営しています。この事業は日本に住む外国人である夫と、「何が日本に住む外国人にとっての課題なのか」徹底的に話し合って生まれたものです。日々問題に直面し、乗り越えてきた私たちだからこそ気づき、事業化できることだと思っています。子どもたちも、困っている人たちに向けて解決策を提示できるようなスキルや思考を持っている人になってくれたら嬉しいです。

—最後に、同じくハーフのお子さんを育てる親御さんに向けてポジティブなメッセージをお願いします!

うちの子たちはまだ小さいのでハーフを理由にからかわれることはないですが、もう少し大きくなったときどうなるかは分かりません。でもそれはうちに限らず、ハーフの子どもがいる家庭なら皆悩んでいることだと思います。

うちではハーフは「個性」だと考え、いろんなことにチャンレジさせて子どもの成功体験を作ってあげることが、自己肯定感につながるだろうと信じ実践しています。子どもたちには自分の境遇を強みだと思ってほしいし、受け入れる側も温かく迎えてくれたら嬉しいですね。そうやって社会全体が前向きに変わっていけば、日本はもっとグローバル化が進むんじゃないかと思います。

私もまだまだ子育て真っ最中で分からないことだらけなので、逆にいろいろな人のお話を聞いてみたいです。一緒に楽しみながら取り組んでいきましょう!

(後編おわり)

logo(final)

椿奈緒子さんから頂いた『ギフト』
※LITTLE PUMPKINではお話を伺ったお母さん、お父さん、有識者の方から頂いた知恵やアドバイス、また取り組んでいらっしゃることなどを『ギフト』と呼んでいます。

1. 育休はキャリアストップじゃなく新しい世界を広げる期間。会社員じゃできないことにどんどん挑戦!

2. 機会損失は親の責任。タッチポイントを増やし、個性を伸ばす

3. 自己肯定感を持った子どもになってほしいから、「あなたはできる」と言い続ける

お話を聞いて

前編の中でも少し触れましたが、椿さんとはご本人が運営していらっしゃる「パワーママプロジェクト」を通じて親しくなりました。椿さんはIT業界では有名な方なので、私は以前から知っていたのですが、これまで直接お会いしたことはなく。ただ残念ながら授賞式のときは日本にいなかったので、まだ直接お会いできていないのです(涙)。次回帰国したときにはなんとか……!

椿さんは写真で見てもお分かりのとおり、弾けんばかりの笑顔が魅力的な女性です。今回はオンラインでの取材でしたが、ポジティブな発言しか出てこない椿さんの話を聞いていると、どんどんこちらの気持ちも明るくなっていきます。他人も元気にする力を持った方だと思います。

これまで社内起業家として7つ事業を立ち上げ、そのうち5つ失敗してきたそうです。本人が「本当に仕事でいろいろあったんで打たれ強くなりましたね」とおっしゃるとおり、私には想像つかないくらい大変なことを乗り越え、ここまで来られたのだと思います。

でも、「育児も予想外のことたくさん起きますけれど、仕事でいろいろ経験した分テンパらなくなりましたね」と笑い飛ばしてしまうその強さ。母親としても女性としても見習いたいです。

待機児童問題を経てさらにパワーアップした椿さんが社会復帰後、どんな事業を生み出すのか。これからも椿さんから目が離せません!

椿さんオススメの育児書 & 絵本

◇オススメポイント◇
「『恐竜トリケラトプス』シリーズは、トリケラトプスが様々な肉食恐竜と戦うストーリー。戦う・恐竜・強い!の三拍子揃った本で、息子が3歳になった頃から1年間くらいハマっています。毎晩読み聞かせをしているのですが、読んでいる方も飽きるので(笑)2週間に一度は図書館へ行き、シリーズ内で違う本を借りてきます。多くの男の子ママが通る道だと思いますが、私も恐竜に詳しくなりました(笑)」
◇オススメポイント◇
「インタビュー内でも出ましたが息子が国旗ブームで、国旗で国を当てたり、その国の挨拶を覚えたり、その国旗が何を意味しているのかクイズをして遊んだりしています。テレビを見ていても外国人が外国を取材する番組が多く国旗がよく出てくるので、「あ、これはフランス!」など得意げに教えてくれます(笑)。国旗の絵本も複数あるので、図書館で色々借りてきます。」
◇オススメポイント◇
「様々な育児書を徹底的に読みましたが、私はこの本がもっとも腹落ちしました。」

前編(育休は世界を広げる期間。ブラジル人妻&社内起業家・椿さん流ポジティブに生きる方法 )はこちら


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