元気な子どもを出産したい。妊娠中のお母さんであれば誰もが願うことだと思います。しかし時には予期せぬ事態により、出産直後から入院を余儀なくされることも……。ここでは6ヶ月間、娘がNICU(新生児集中治療室)に入院した公文自身の経験から、「もし子どもがNICUに入院することになったら」というテーマで書いていきます。※情報は、妊娠23週、体重570gで生まれ、NY市内の病院に入院した私の娘が受けた治療やケアに基づいていることをご了承ください。
The Neonatal Intensive Care Unit
NICU(ニキュー)は、The Neonatal Intensive Care Unitの略で、日本語では「新生児集中治療室」と呼ばれます。大きな病院はNICUが併設されていることもありますが、併設されていない病院で出産し入院が必要となった場合には、そこからNICUのある病院へと搬送されるようです。
私の娘が入院していたNICUではハロウィンの時期になると、子どもたち一人ひとりに違うコスチュームが配られました。 うちの子はいつも「この子はパワーがあるからね」と言われていたからか、渡されたのはスーパーガール! 今はもう体が大きくなり入らないので、羊の人形に着させています。
保育器の中で体調管理
私の娘のように、予定日より早く生まれてきた赤ちゃんや、先天性の病気が見つかった赤ちゃん、お産の過程で具合が悪くなった赤ちゃんなどがNICUに運ばれ、厳重管理体制の元、検査や治療が行われます。
入院時、赤ちゃんは一人ずつ温度や湿度の管理がしやすい保育器の中に入れられ、酸素や栄養の供給を受けながら治療を受けます。
私の娘もしばらく保育器の中で過ごしていましたが、元気になってきたら脳の成長に必要な音や光などの外的刺激を与えるため、保育器を覆っているカバーが開けられ、最終的にはベッドが用意されました。
ある日いつものように保育器に行くと、カバーが開けられこの紙が貼ってありました。 入院が長かったので、何度こうした心遣いに救われたか分かりません。
初めに言われたのは、「怒らないで」
NICUには生死の瀬戸際にいる赤ちゃんも多く、間近で見ている親は極限状態に置かれます。状況によっては、それが何日も続くこともあります。
保育器のそばで治療の様子を見守り、体力と気力が限界に達したら近くにある仮眠室で休む。娘が6ヶ月入院している間、まさに「今日が山場」の赤ちゃんを見守るご両親を何度も見てきました。
医師の説明に涙し、頭を抱え、夫婦で抱き合い、慰め合い、疲労が溜まった顔で階下のカフェテリアにコーヒーを買いに行く。これは肉体的にも精神的にも非常に辛いことです。
命が懸かっている現場ですから、患者もドクターもナースも誰もが極度の緊張状態に置かれ、ちょっとしたことをきっかけに感情が爆発してしまうこともあります。実際、ナース同士の喧嘩を目の当たりにしたこともありました。
生まれた直後。小さな手編み帽はNICUからのプレゼント
ドクターやナースを信頼をしているとはいえ、大事な我が子がどうなるか分からない。時には親も声を荒げてしまうこともあるでしょう。
私たちは子どもたちが入院してすぐドクターから「怒らないでください」と注文をもらいました。極限状態に置かれた親はドクターやナースに対し、怒ることがあるそうです。
しかしそうなると処置が遅れ、時にそれが深刻な事態を引き起こすこともあると言います。冷静でいるのはとても難しいですが、それでもここはドクターとナースを信頼し、委ねるしかありません。
私も生後13日で息子(双子の弟)を亡くした時、どこに気持ちをぶつけたら良いのか分からず、ドクターやナースに怒鳴りたい気持ちになったこともありました。
けれど、隣で懸命に闘っている娘がいましたので、私が怒ることで治療に何かしらの影響が出てしまうことを避けたいと、必死にこらえました。
怒らない。
難しいですが、NICUでは冷静でいることを求められます。
息子の葬儀のあと。娘のもとに息子の写真を持っていったら、一生懸命そちらの方に向かって 手を伸ばしていました。「お姉ちゃん、あなたの分も頑張るからね。」と弟に話しかけているようにも、 寂しくて泣いているようにも見えます。