LITTLE PUMPKIN コラム

子どもがNICUに入院することになったら(2)

引き続き「子どもがNICU(新生児集中治療室)に入院することになったら」というテーマで書いていきます。今回は、医療知識のない素人(公文)がどう医師とコミュニケーションを図り、理解を深めていったかというお話です。

疑問を残さないようにメモを取る

NICUに入院するのは、生まれたばかりの赤ちゃんに何かしらの検査や治療が必要だと判断されたからです。家族はドクターと話し、自分の子どもが今どういう状況なのか、そして今後どういう検査や治療をしていくのか理解しなくてはいけません。

おしゃぶりが大きく感じるほど小さかったころの娘。当時は定期的に輸血をしていたので
全体的に体が赤黒くなっています。

親の同意がなければ進まない治療もあるので、なぜそれをする必要があるのか、それをするとどうなるのか、メリットは? リスクは? あとでから後悔しないよう、たとえ多少踏み込んだ質問だとしてもした方が良いだろうと私は考えています。

私と夫は息子が生後13日で亡くなるまでは、ドクターやナースと話をしてもその場で納得し、「OK」と答えていました。もちろん気になるところや分からないところがあれば多少は質問していましたが、基本的にはドクターに任せようと考えていたので、「もしこうなったら?」という仮説はほとんど立てていませんでした。

息子が亡くなる前、「肺から空気が漏れています。だからこういう処置をします」という説明はされましたが、「万が一体調が急変した場合どんな処置をするのか?」までは確認していませんでした。というよりも、そういう事態が起こる可能性についてはほとんど考えていなかった、というのが正直なところです。

私たちは死亡解剖を拒んだので、息子が亡くなった直接の原因は分かりません。けれど亡くなった直後、「肺から漏れ出た空気が急速にお腹に溜まり、心肺を圧迫したのではないか」とドクターから説明を受けました。それが理由だったのだろうと考えています。

私も夫も、なぜ事前にあらゆる可能性について考えておかなかったのか、息子が亡くなってからとても後悔しました。もちろん私たちは医療の素人なので、私たちが気付くようなことなどドクターもナースも当然気づき、先回りして対処しているかもしれません。

けれど1%だとしても、私たちの質問によって何かが変わった可能性だってあります。

それからはドクター、ナースから聞いた話は全てメモし、私と夫の間で共有しました。その日の体重、血圧、酸素飽和度に始まり、容態、治療、薬、また話を聞いたドクターやナースの名前も書き、可能な限り仕入れた情報を詳細に記録していきました。

情報はEvernoteで共有

私たちは基本的に朝晩、夫婦で通院していましたが、それぞれ仕事が立て込んでいたりまた体調不良で行けなかったりした場合には、どちらか一人で行っていました。夫もいる時はメモは夫の役目ですが、私しかいない時は私がメモをします。記録したメモはすぐに情報共有できるよう、Evernoteを使っていました。

これは生後1ヶ月ほど経った頃の記録です(個人情報に関わるところは消しています)。独自に調べた情報や走り書き程度のメモもあるので、単語や内容については不正確な部分があるかもしれません。メモの参考程度にご覧いただければと思います。

9月16日(水)Dr ◯◯/Nurse ◯◯
•夜: 容態は安定している
 •NO: 酸素濃度は34%、NOは4.5ppm
 •HFOV: Amplitude (Delta P) 18 cm H2O、Mean Pressureは16.7前後
 •血圧は65/29 (42)
 •母乳投与を継続
•4時間で2cc•昼:Dr ◯◯/Nurse ◯◯ 容態は安定している
 •INO: 酸素濃度は47%、NOは4.2ppm
 •HFOV: Amplitude (Delta P) 18 cm H2O、Mean Pressureは16.8前後
 •血圧は63/34 (43)
 •体重は980グラム
 •胴囲は21.5センチ
 •母乳投与を再開
•4時間で2cc
 
9月28日(月)夜: Dr.◯◯
  • なぜ血圧が下がっているのか? 輸血がなんで多いのか?
    • 新生児は血液を作れない
      • 正常分娩の子どもも、最初は赤血球数が減少する
      • NICUから退院する寸前の子どもでも、何回も輸血することがある
      • 心臓と腎臓を調べた
        • 心臓には問題ない
        • 腎臓は、以前の細菌感染の影響で、まだ機能が完全に回復していないのかもしれない
    • 網膜の診断の結果は?
      • まだ診断していない。今週か来週に実施する予定
  • 夜: Nurse ◯◯
    • 血圧がさらに低下、呼吸も良くない
      • HFOV: Amplitude (Delta P) 25cm H2O、Mean Pressureは16.1前後
        • 酸素濃度は55%
      • 血圧は41/16 (23)
        • ドーパミンを上げた後は 44/25 (33)
      • 輸血する
      • ドーパミンを8から10mcg/kg/minにさらに上げた
      • 母乳を停止
        • 輸血のため
      • ウンチが出ないため、浣腸を予定
      • 超音波検査を実施
        • 特に問題は見られなかった
  • 昼: Nurse◯◯
    • 浮腫みはあまり悪くない
    • 超音波検査は今日のいつか
    • 母乳を再開
      • 現在は2cc/4hrs、これを2.5cc/2.5hrsへ増やす
    • エキストラのカリウムを投与中
    • エキストラのアルブミン(5cc)を投与する予定
    • ドーパミンを7mcg/kg/minにさらに上げた
    • CBC: 赤血球が35と下限なので、さらに下がったら輸血を検討する
    • 血圧は63/26 (40)
    • HFOV: Amplitude (Delta P) 21 cm H2O、Mean Pressureは15.5前後
      • 酸素濃度は60

メモを取る内容を決めておく

必ずメモを取ること(私たちであれば、体重、酸素飽和度、血圧、食事量など)を毎日決めておくと他の日と比較できるので、何か気になる点があればすぐにドクターに確認できます。

 ベッド側のモニターで数値を確認できる

治療内容や薬の名前は聞いたことがないものも多いので、NICUにいる間は単語や簡単な内容だけメモし、後から自宅に帰って医療機関のサイトなどで確認をしながら追記していきました。

私たちはよく、『メルクマニュアル』を参考に調べていました。
どうしても分からないことがあれば直接ドクターに尋ねれば、すぐに疑問も解消されます。

思いが伝われば関係が築きやすい

詳細に調べ、質問を続けているとドクターもナースも、いかに私たちが本気で向き合っているか分かってくれます。

もちろん子どもが入院している親御さんは全員真剣だと思いますが、どれだけ忙しいドクターやナースから情報を引き出し、こちらが納得いくまで話をしてもらえるかは、素人とはいえ親がどれだけ知識を持っているか、ここは大事なポイントじゃないかと私は考えています。(インターネットの怪しい情報に惑わされ、ドクターを困らせる質問をすることや、他の患者に迷惑をかけるほどドクターを拘束するのは絶対ダメです)

当然「知ること」は患者の権利で、病院側としても「可能な限り情報を提示する」というスタンスを持っていると思いますので、私たちに限った話ではないかもしれませんが、それでもやはりこちらが真剣であればそれだけドクターもナースも応えてくれたように感じました。

あるときNICUのセンター長と話す機会をいただき、夫が突っ込んだ質問をしていると、そのセンター長が驚いた顔をして夫に、「あなたのバックグラウンドは?」と聞いてきたことがあります。おそらく医療関係者だと思われたのでしょう。

夫はもともと小さいころから本を読むのが好きで、体の仕組みに関するものも結構読み込んだらしいので、私のようなド素人に比べればかなり知識を持っていた方だと思います。しかし娘が受けている高度医療を理解するには、夫がもともと持っていた知識だけでは足りません。忙しい仕事の合間を縫って一生懸命調べ、得た知識を元にドクターと議論を重ねていました。

私は私で、素人だから気付ける目線を大切にして、たとえ内容も英語も幼稚だとしても、恥ずかしがらずに質問をしていました。

私たちが質問をすればするほど、段々とドクターやナースからも、「ほかに必要な情報はない?」「そういえばあの件ドクターと話した? まだだったら呼んでこようか?」と声をかけてくれるようになりました。NICUのなかにいる人たちにとって、私たちは「情報を大事にする親」、そういう印象だったのだと思います。

私たちも何か恩返しをしたいと、日本にいる家族に頼んでお菓子を送ってもらいそれを手渡しするなど、信頼関係を築くための努力は欠かしませんでした。

ナースからは、「あなたたちは毎日子どもに会いに来て偉いわ」と言われていたので(と言っても、周りの家族も毎日来ているようには見えましたが)、それだけでも信頼を得ていたようには思えますが、たくさん質問をする、感謝の気持ちを忘れない、こうした日々の積み重ねによって、ドクターやナースとの関係はどんどん良くなっていった気がします。

退院時には、お世話になった何人ものドクター、ナースが代わる代わる私たちの元を訪れ、たくさん声をかけてくれました。なかでも強く印象に残っているのは、「You’re amazing parents」という言葉です。その一言で、6ヶ月の苦労がすべて報われた気がしました。

入院が長引けば長引くほど親もどんどん疲弊していきますが、ドクターやナースとの間で関係ができていればその中で笑顔も増えてくるので、辛い通院生活も楽しめると思います。

去年のクリスマス前にNICUに送ったカード。感謝の気持ちを込めてこれからも毎年続けていきたいと
思います。

アウトプットの機会を作る

メモを取っていてもそれを見返さないと意味がないので、私たちは意識してアウトプットの機会を作るようにしていました。私が運営している個人ブログや、日本で心配している家族に向けて週に1度レポートを提出するなど。

ブログにしてもレポートにしても、私たちとは違い、日頃娘の状況を間近で見ていない人に説明するので、より分かりやすい言葉で伝える必要が出てきます。

意外と、普段ドクターとの間で使っている専門用語や治療内容について、分かりやすい言葉で説明しようと思うと分かっていないことが多いと気付くので、まとめながら、「なるほど、これってこういう意味だったのね」と気づいたり、「そういえばあれってどうなったっけ?」と、忘れていたことを思い出すきっかけになったりもします。

体重が増えると貼ってもらえるシール
 
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